大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)1496号 判決

建物の賃借人または占有者は賃貸借の終了の時または占有物を返還する場合に賃貸人または占有回復者に対し自己の支出した有益費につき償還を請求しうることは民法第六〇八条第二項、第一九六条第二項の定めるところである。控訴人は建物を賃借し占有する者が支出した有益費の償還義務は費用が支出された当時の賃貸人が負うのであつてその後賃貸借契約の賃貸人の地位が他に承継されたとしても承継前の賃貸人が償還義務を免れることはないと主張するが、民法第六〇八条第二項に定める賃貸人とは賃貸借終了当時の賃貸人を謂うのであつて、費用支出後賃貸人の地位の承継があつたような場合には反対の特約のない限り新賃貸人においてこれが償還義務者たる地位をも承継するものと解するのが相当である。又占有の関係からいつても、被控訴人は右の如く既に賃貸人の地位を訴外人に譲渡し自らは賃貸借関係から離脱した以上もはや民法第一九六条にいう占有の回復者には当らないというべきである。そうすれば、たとい控訴人が本件建物につき有益費を支出したとしても被控訴人に対しその償還を請求し得べき筋合でない。

(岸上 小野沢 田中)

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